2009年5月16日土曜日

不ぞろいな地主、先行き見守る競馬組合

 笠松競馬場の地主の一部が運営主体の県地方競馬組合(管理者・広江正明笠松町長)に土地の明け渡しなどを求めた訴訟で、名古屋高裁で続く和解協議が難航している。原告側が訴訟に参加していない地主も含めた「統一和解」の条件を提案したものの、その足並みがそろわないためだ。和解に応じる考えを示している被告側の競馬組合は原告側の出方を見守るしかなく、協議は膠着(こうちゃく)状態が続いている。

 原告側は2月4日の和解協議で、争点の一つになっていた土地の賃貸料について、競馬組合が提示した1坪(約3・3平方メートル)当たり年間1200円とする和解案を大筋で受け入れる意向を示した。この賃貸料の増額に対応するため、競馬組合は3月の新年度予算編成で予備費として約1億8000万円を計上した。

 ただ、原告側は賃貸料の問題以前に、和解の大前提として、場内のスタンドなど主要な土地を所有する四つの地主組合全員(約120人)が訴訟に参加することを和解の条件に挙げた。統一和解が必要な理由について、代理人の異相武憲弁護士は「笠松競馬は将来、廃止になる可能性が高い。その後の土地の境界線の確定など跡地利用を円滑に進めるためには、訴訟段階から地主が一致団結することが大切だ」と説明する。

 原告側は、訴訟に参加していない地主65人に参加を呼びかけたが、半数近くが参加の意思を示さず、統一和解に向けた打開の道は開けていない。訴訟自体に反対している地主が多いためだ。異相弁護士は「統一和解をすれば賃料も増額されるのに残念だ。このままでは和解決裂の可能性も十分にあり得る」と話す。和解協議が決裂すれば、一審判決と同様、再び土地明け渡しを命じる判決が出ることも予想される。

 これに対し、被告側の伊藤公郎弁護士は「ここに来て、なぜ原告側が統一和解にこだわるのかわからない」と首をひねる。原告側に訴訟を取り下げるよう説得を続けてきた県調騎会の加藤幸保副会長は「原告側は統一和解にこだわらず、訴訟に参加していない地主とは、和解した後に話し合いをしてもいいのでは」と話している。
 
 次回の和解協議は18日に行われる。(読売新聞)