2009年5月21日木曜日

盛り上げたい 調教師の後藤正義さん、6年ぶり新人デビュー


 笠松町の笠松競馬場で4月、新人調教師の後藤正義さん(29)が独立し、デビューを果たした。同競馬場では27人の調教師がいるがほとんどが40歳以上。新人調教師の誕生は6年ぶり。後藤さんは「若い自分が頑張ることで、笠松を盛り上げたい」と意気込んでいる。
 後藤さんの家系は5代にわたり、笠松競馬場で騎手や調教師を輩出する「競馬一家」で、父保さん(57)も騎手を経て25年のキャリアを持つベテラン調教師。後藤さんは幼いころから馬がそばにいる生活を送った。
 県内の高校を卒業後、鉄工所に就職したが、「味気ない」と感じ、3年で辞めた。「仕事が生きがい」と語る父にあこがれ、22歳から保さんの下できゅう務員として働いた。
 05年4月には里帰りしたオグリキャップの世話をした。同年、笠松競馬は経営状態が悪化し、県は赤字決算になれば廃止する方針を打ち出していた。里帰りの日、1万人近くの観客がスタンドからはみ出し、割れんばかりの拍手で一頭の馬を迎えた。「自分も強い馬を育てれば、笠松は生まれ変わるはず」と確信したという。
 1年かけて勉強し、28歳になって受験資格を持った08年10月に受験。馬に関する専門知識はもちろん、一般教養、経営学、馬術の実技も必要な難関だったが、一発合格。7頭の馬を抱えて開業した。
 午前3時に起き、食べたエサの量や筋肉の張りを見て馬の健康状態を確認し、馬場を走らせてトレーニングをする。馬の能力を引き出す難しさを痛感する日々だ。「馬の気持ちを考え、馬とともにレースに臨む調教師でありたい」と話す。
 現在、16レースを戦ってアグネスイカロス号が3勝。「若い自分が率先して笠松競馬を元気づけ、1360勝の戦績を持つ父に、いつの日か追いつきたい」と意気込んでいる。

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 同競馬場は、一部地主が県競馬組合に土地の明け渡しを求めた訴訟の控訴審で、土地の賃料をめぐって和解協議が続く。双方が一度合意した1坪1200円でも年間約3700万円の負担増となり、10年度以降は借金返済などが加わって年間約2億円の支出増が見込まれ、経営状態は苦しくなると予想されている。(毎日新聞)
<写真>「一番の実力馬」というアグネスイカロス号と後藤さん=笠松町円城寺で