2010年5月16日日曜日

岩手競馬、鈍足スタート 水沢不振ズシリ


 今季の岩手競馬の盛岡競馬場(盛岡市新庄)での開催が15日、始まった。「収支均衡が達成できなければ廃止」の原則があるが、10日までの水沢競馬場(奥州市水沢区)での開催の売り上げが計画額を下回るなど、苦しい出だしとなっている。
●ネットは好調
 好天に恵まれたこの日、午前10時の開場時には約1200人が並んだ。それでも、入場者数は3442人で昨年の開幕日より799人少なかった。勝馬投票券の発売総額は1億1423万円で、前年比11・5%減だった。
 県競馬組合によると、4月3日~5月10日にあった水沢競馬(18日間)の売り上げは27億6900万円で、計画額の29億6500万円を6・6%下回った。
 内訳は「自場販売」が17億5600万円(計画額比マイナス10・6%)、他の地方競馬場などで販売する「広域委託発売」は5億9200万円(同マイナス0・5%)、「インターネット発売」は4億2100万円(同プラス3・6%)だった。
 自場販売は大型連休中の客足が鈍かったことが影響したとみられるという。計画額を上回ったのは、インターネット発売だけ。同組合の担当者は「入場減に加え、今の経済状況が影響して客単価も下がっている」と話した。
 オープンセレモニーに訪れた達増拓也知事は「盛岡のオープンで勢いを付けたい」と話した。
●5重単伸びず
 唯一の良い材料のインターネット発売だが、4月から導入した「5重勝単勝式・ランダム方式」の売り上げは伸びていない。
 指定された5レースの勝ち馬がすべて当たると払い戻しを受けられるという方式。岩手が導入している「ランダム方式」とは、勝ち馬を自分で選ぶのではなく、コンピューターが勝手に選ぶもの。サッカーくじtotoの「BIG」と同様の方式で、キャリーオーバーが続けば、最高で2億円がもらえる。
 それが、水沢開催での売り上げは656万8200円にとどまった。担当者は「もう少し売れると思っていたが」と話す。
 達増知事はこの日、「今季は広報も強化している」と話したが、「5重単」はネットでしか販売しないこともあり広報もネットにほぼ限られ、認知度が低い。盛岡市の30代女性は「何かきっかけがある時に競馬場にくるが、宣伝がなくてどんなことをやっているのか分からない。5重単をやっているなんて知らなかった」と話す。
 この日の「5重単」の売り上げは、10万2500円で、当たりは出なかった。16日へのキャリーオーバーは約26万4千円で、「2億円」にはほど遠い。
 岩手競馬での最高の配当額は、1口(100円)あたり128万8千円。同じ馬券を発売している帯広競馬場(北海道)では1口1千万円を超えた当たりが出たことと比べても、「魅力」は少ない。
 八戸市からきた競馬歴20年以上の会社経営男性(60)は「実際に馬を見たいから、ネットではやらない。でも岩手では良い馬がなかなか出てこないし、場所も遠い」。市街地から車で20分以上かかる山の中にある立地も、足かせとなっている。
●計画額は強気
 馬券発売額が伸び悩んでいた岩手競馬は2007年、県議会で存廃論議が持ち上がった。一時は増田寛也知事(当時)が廃止を打ち出したが、県や盛岡市などが県競馬組合へ330億円を融資する案を県議会が1票差で可決、「収支均衡」を条件に存続が決まった。
 その後、発売額が計画額を下回っても、賞金や事務経費などを削ることで、黒字をかろうじて達成してきた。
 08年には、馬券の発売やファンサービスなどの民間委託を試みたが、条件が合わずに断念した。
 今年度の年間売り上げ計画額は、昨年度実績を約2億5千万円上回る209億7千万円としている。
 かつてはスイフトセイダイやトウケイニセイといった有名な実力馬がいたが、最近は額にハートの白斑があるトレジャースマイルが話題になったぐらいだ。(朝日新聞)