2012年2月11日土曜日

札幌競馬場、秋に40年ぶり大改修 家族連れスペースやセリ場

日本中央競馬会(JRA)は今年、札幌競馬場(札幌市)のスタンドを改修する。同競馬場の取り壊しを伴う大規模改修は約40年ぶりで、改修費は105億円。建て替えにより、新たな顧客の獲得を目指す。家族連れが楽しめるスペースを拡大するほか、アジア人富裕層などを想定しセリ場を刷新する。10月に工事に着手し、2014年夏の完成を目指す。

 現行のスタンドは1971年に完成したもので、老朽化していた。JRAは全国で10の競馬場を順次、改修しており、大規模改修は札幌競馬場でひとまず終了する。

 新スタンドでは、現在は6人がけの椅子を、女性や高齢者でも出入りしやすいよう2人がけにする。通路幅も広げ、すれ違いやすくする。ただスタンド全体の規模は縮小し、延べ床面積は現行の4万4000平方メートルから3万平方メートル程度にする。座席数も約2割減らす。14年には来場者数を11年と比べ1割増の20万人にする目標だ。

 同競馬場の最大の特徴である観客席の最前列の芝生スペースも拡大する。レジャーシートを敷いて飲食しながらゆったり観戦できるようにし、家族連れを取り込む。どの程度広げるかは今後調整するが、1割前後増やす見通し。

 芝生スペース南側は起伏のある丘にし、シラカバの木を植える。夏のレースには、秋に開催されるG1レースに参加する有力馬が参戦し、道外からも多くのファンが来場する。こうした道外客が北海道らしい雰囲気を楽しめるようにする。

 馬産地としての魅力も最大限発揮し、スタンドの外に2~3頭の馬を放すゾーンを設ける。引退した名馬を放すことを検討しており、人気スポットとなりそう。現在は地下にあるパドックと競技場間の馬の通り道も地上に配置し、観客席から見ることができるようにする。

 2011年のレース開催中の来場客は18万人。ピークは1976年の62万人で、長期低迷が続く。11年の来場者の内訳は男性が大半を占め、女性は2割に満たない。家族連れは1割程度。木口明信場長は「家族連れや女性客などこれまで競馬場を訪れたことのない人が来てもらえるようにしたい」と話す。

 同競馬場では日高軽種馬農業協同組合(浦河町)が、道内で唯一、2歳馬のセリ市を実施している。現在はコース横の屋外で開催しているが、屋内にセリ場を新設する。

 最近、道内各地のセリ市では、中国人を中心にアジアの富裕層が高額落札するケースが目立っている。同競馬場でも今後アジア人のセリ参加者が増えると予想しており、環境を整備する。

 アジア人のセリの参加者が増えれば、レース開催時の来場者も増えるといった相乗効果も見込める。セリで一度来てもらい、レースシーズンにもう一度来場してもらう算段だ。そのため改修後は、現在、日本語だけの場内の案内板に、英語、中国語、韓国語を併記する。

 道内では10年に函館競馬場(函館市)がリニューアルオープンし、集客力のある施設に生まれ変わった。札幌競馬場も観光資源が少ないとされる札幌駅の北側エリアで、新たな観光スポットとなる可能性がある。(日本経済新聞)