2012年11月20日火曜日

「廃止本当か」「寂しい」 福山競馬、関係者やファン動揺


 福山市が福山競馬について「来年度予算は組めない」と関係者に伝え、事実上、本年度での事業廃止方向が明らかになった19日、厩務(きゅうむ)員や調教師たち関係者やファンに動揺が広がった。「継続に向けて経費を削る余地はまだある」との声の一方で、「運営は厳しく、やはりか」と気落ちする姿もあった。
 「本当に廃止の方向なんか」。競馬場の厩舎で作業をしながら厩務員岡野雅樹さん(32)がつぶやいた。一人息子はまだ5歳。「どうせやめるなら、早く雇用や生活費の補償について話し合いたい」
 40年働くベテラン厩務員の世良吉正さん(65)は「職場がなくなると思うと寂しい」と馬をなでた。働き始めたのは高度経済成長期の最中。福山競馬は計約400億円を市の財政に繰り入れ、公共施設整備などに貢献してきた。「生活をどうすればいいんでしょうか」と肩を落とす。
 競馬ファンとして通い詰めた元厩務員の会社員加藤隆由さん(38)=岡山市南区=は「福山のシンボルがなくなってしまう」。会社員神原伸二さん(46)=福山市松永町=は「中国地方唯一で自慢だったのに」と残念がった。
 福山競馬は現在、累積赤字18億6900万円を抱え、経営難は深刻。本年度上半期(4~9月)の収支も約2100万円の赤字を計上した。市は18日、一部の競馬関係者に来年度の事業継続は不可能との認識を伝えた。羽田皓市長は近く廃止を表明するとみられる。
 ただ調教師の渡辺貞夫さん(64)は「本当にこれ以上の経費削減はできないのかね」。廃止の方向にそう疑問を呈した。(中国新聞)
【写真説明】馬をなでながら福山競馬の行方に不安を隠せない世良さん