2008年11月3日月曜日

決裂の波紋:岩手競馬の行方/2 「負」押しつけ、民間に重く /岩手

◇組合「リスク取れぬ」
 「民間と組合の最大の違いはリスクを取るところだと思う。ある程度の損は覚悟で、うまくやれば利益が得られる時に我々はリスクを取れない」
 達増拓也知事は1日の県競馬組合議会で、民間企業と組合との考え方の違いを述べた。この見解が企業の参入ハードルを高くしているとの見方もある。
 組合は負債を整理するために構成団体である県や奥州、盛岡両市から融資を受けた330億円を返済する義務がある。そのため包括的な民間委託に向けて公募した際、売り上げに応じて組合に支払う「収益保証率」を委託条件に盛り込んだ。組合が作った借金を委託先企業に「肩代わり」させようというのだ。
 日本ユニシスは公募時に収益保証率を0・25%とした。構成団体への返済は利益が1億円を超えた場合、超えた分の半分を充てる取り決めがある。ユニシスの案だと、1億円の利益を出すには、今季の売り上げ見込みの1・8倍に当たる400億円の売り上げが必要になる。組合はユニシスの設定が低いと難色。達増知事は9月県議会で「少なくとも07年度より売り上げが伸びた場合は、返済してもらいたい」との考えを示した。当の組合は昨年度4900万円の黒字だったが、元本返済はしていない。
 委託条件には、他にも岩手競馬の負の部分を民間に背負わせようという考え方がみられる。「先取り方式」もその一つだ。
 全体の事業予算からあらかじめ組合の費用を確保するこの方式は、売り上げが低迷しても赤字を背負うのは委託先企業で、組合は黒字を確保できる。
 ばんえい競馬は対照的な方法で民間委託を行った。委託にあたって62億円の累積赤字や職員の退職金などの精算金を、当時の構成団体がすべて負担。さらに単年度で赤字が出ても、まずは主催者の北海道帯広市の積立金を取り崩すという方法で、委託先企業に負担をかけさせないようにした。
 業務受託するソフトバンク系列の関連会社、オッズパーク・ばんえい・マネジメントの広報は「岩手のような状況ではないため、判断できる立場にない」としながらも「累積赤字を清算し、まっさらな状態から始めるということもあって参入を判断した」と説明する。帯広市は「委託なしにばんえいの将来はないという危機感があった。収益保証などは民間企業にとって厳しいと思う。岩手競馬は、委託できなくても組合の運営でできると考えているのでは」と推測する。
 ノーリスクの組合とハイリスクの民間という考え方がある限り、民間委託には困難が伴いそうだ。(毎日新聞)