2011年9月6日火曜日

荒尾競馬の廃止正式表明、再就職先の確保は難航必至


 荒尾市の前畑淳治市長が5日、荒尾競馬の廃止を正式表明したことで、約180人の雇用が失われることになった。調教師、騎手、厩務(きゅうむ)員……。市は再就職先を確保する対策チームを設置する方針だが、他の地方競馬も経営は厳しく難航は必至。廃止への最大の障壁となりそうだ。

 競馬組合(主催団体)管理者である前畑市長は、この日開会した市議会の冒頭、経営の悪化と、改善が困難視されることを理由に今年度限りでの廃止を表明。さらに、「競馬関係者の新しい環境への準備期間などを考慮し、今年12月をもって閉鎖する」とし、レースは年内で終了させる考えを明らかにした。

 市長は市議会後、同競馬場の会議室で、馬主、調教師、騎手や厩務員ら競馬関係者に改めて決断の理由を説明した。

 これに対し、出席者からは「存続のため必死に頑張ってきた。絶対、廃止なのか」「馬の行き先、人の再雇用先を確保するのに時間がかかる。レースは来年3月まで続けるべき」「廃止が決まると、馬は急速に他場に流出する。12月までレースはできるのか」などと反発の声が上がった。

 前畑市長ら市側は、再就職などへの対策チームの設置と、5日付の在籍者を対象に「協力見舞金」の支給を検討していくことなどを説明して理解を求めた。

 市長の決断について、渡辺賢一厩務員会長(47)は「私は馬と接する仕事であればどこにでも行くが、妻子は荒尾市を離れたくないという。これからどうするか迷っている」と困惑気味。林田三男・県馬主会副会長は「12月までレースが成立するかどうかも分からない。役員会などで早急に話し合う」と話していた。

 廃止には13億6000万円にのぼる累積赤字の処理、見舞金の準備、借入金の処理などで数十億円の財源が必要とみられる。前畑市長は「5日早朝、蒲島知事に状況を説明して廃止への理解を得た。財源確保についても県の支援を求めていく」と述べた。

 一方、蒲島知事は5日、記者団に対し、「(管理者である)市長が熟慮されたうえでの判断。尊重したい。今後、競馬場関係者の雇用問題などに協力していく」と述べた。ただ、廃止に伴う費用負担については、「(まだ)考えていない」とした。(読売新聞)
【写真】荒尾市側(手前)への反発の声が相次いだ競馬関係者への説明会