2009年6月7日日曜日

笠松の街中を歩いている馬は!? 話題になればと散歩


 晴れた日に笠松町役場近くの堤防道路で車を走らせていると、道路から見える笠松みなと公園の散歩道に白い馬の姿を見かけた。笠松は「競馬場の町」だが、厩舎(きゅうしゃ)のないまち中で馬が歩く姿に驚き、思わず車を止めて話し掛けた。一体何をしているのですか。
 馬に乗っていたのは、笠松競馬場で誘導馬の飼育管理を務める塚本幸典さん(52)=岐阜市柳津町。国内最高齢の誘導馬で「パクじぃ」の愛称で親しまれるハクリュウボーイ(26歳)や、4歳の時に国内最年少で誘導馬デビューした「エクスペルテ」(5歳)を育てている。
 馬の名は「ウィニー」。大型ポニーで雄、5歳。質問すると、塚本さんは「ペットです」と笑顔で答えた。
 友人が飼育できなくなったウィニーを塚本さんが昨年6月に引き取り、笠松競馬場近くの馬房で飼育している。仕事の合間に塚本さんが1日3~4時間かけて調教し、「笠松のまちづくりの話題になれば」と、昨年9月ごろから一緒に散歩しているそうだ。
 散歩は晴れた日に、笠松競馬場から笠松みなと公園を回るのが定番。町役場などのまち中を巡ることもある。散歩する町民や、公園を訪れた親子連れがウィニーを見かけると、話し掛けて鼻をなでたり、一緒に写真を撮ったりする。取材の際も、公園に笠松保育園の園児が遊びに来ており、園児たちは「よしよし」と言いながら馬の顔をなでていた。
 ウィニーには人が乗ることもできる。記者も乗せてもらうと、いつもより80センチほど高い目線になり、木曽川などのいつもの風景が変わって見えた。「パカパカ」と馬のひづめの音を聴き、ゆったり揺られながらの散歩は気持ちが良い。「触って慣れたら乗って、大人も馬との触れ合いを楽しんでほしい」
 約20年間にわたって馬と接してきた。「馬を触っていると癒やされる。散歩している人たちも、ウィニーに触ると笑顔になる」
 一方で、競馬場は一部地主による土地明け渡し訴訟の一審で主催者が敗訴。判決は「地方財政などに貢献するという役割を終えたという評価もある」と指摘し、笠松競馬の存在意義を否定されて悔しかった。
 ではどうすればいいか。塚本さんは「馬が町の人たちの生活の中に息づく存在になればいい。『競馬場の町』から『馬の町』へ変わる必要がある」と考える。そう考えていた時にウィニーと出会い、馬と触れ合う機会を多くの人に持ってもらうためのボランティアを始めた。
 広江正明町長も「馬と触れ合える公園はめったにない。笠松町ならではの風景をつくってくれる」と感謝する。
 「馬みてふれて笑顔咲く笠松」と書かれたのぼり旗が掲げながら、ウィニーは『馬の町』実現に向けて今日も歩いている。塚本さんはウィニーのえさ代の援助も受け付けている。(中日新聞)
<写真>園児たちと触れ合うウィニーと塚本さん=笠松町の笠松みなと公園で