2010年8月31日火曜日

荒尾競馬出走手当削減通告から1ヶ月 在厩馬じわじわ減少


◆ここ2ヶ月で60頭離れ290頭に 厩舎関係者に広がる不安

 荒尾競馬組合が県馬主会に出走手当削減を通告して1カ月。同競馬では、厩舎の所属馬がじわじわと減り始めている。現在の在席馬は約290頭。6月末に比べ60頭近く少なくなった。「次は人がいなくなるのでは」。厩舎関孫者に不安が広がっている。
 荒尾競馬では21日から、第7回主催レースが開かれている。九州産馬による高額レース「霧島賞」があった26日には、1日の売り上げが本年度初めて1億円を突破り関係者の表情も明るかった。
 しかしその背後で、馬の減少は加速している。在厩馬は、1999年の610頭をピークに漸減しているが、ここ数年は350頭前後で推移していた。それが7月末に326頭、今月20日には291頭になり、300頭を割り込んだ。
 「手当の高い競馬場へ移したり、処分したりする馬主が増えたのだろう。馬が減るのは馬主の気持ちが荒尾から離れ始めた証拠」。ある馬主は説明する。 手当削減を伝えて以降、組合と馬主会は対立したまま。「競馬存続のために不可欠な措置」として協力を求める組合に対し、馬主会は「現行通りの支払いを求めていく」と強硬姿勢を崩していない。
  ◇   ◇
 在席馬の減少は、厩舎関係者の生活に直結する。調騎会会長を務める調教師・平山良一さん(62)は「一度離れた馬は二度と戻ってこない。オーナーにお願いはしているが、賃金も手当も低い荒尾に引き留めるのは難しい」とため息をつく。
 平山さんの厩舎でも、既に6頭が姿を消した。
 「これからも馬が減り続けたら、現場はどこまで持ちこたえられるか。真綿で首を絞められているようだ」。
 調教師の下で働く厩務員はさらに深刻だ。69人でつくる厩務員会の渡辺賢一会長(47)は「馬に続いて仲間が減り、いずれ職場がなくなってしまうのではないか。将来への希望が見えない」と話す。
 厩務員には、担当する馬の頭数に応じて手当が支払われる。これまで出走手当引き下げの際には、連動して厩務員手当も削減されてきた。馬が減れば、さらに雇用の不安ものしかかる。
 「ここで耐えれば将来は明るいのか、それとも競馬廃止を見据えての規模縮小なのか。私たちが何よりも願っているのは競馬の存続。組合には強い意欲を見せてほしい」。
 馬主や厩舎関係者が組合に求めているのは、競馬存続へつながる明るい”青写
真”。しかし、競馬業界全の売り上げが落ち込む中での現状打開は容易ではない。 
 同組合は現在、起死回生策としてファンの目線に立ったレース編成を模索中。
 「当たりやすい少数頭から高配当が狙える多数頭まで、荒尾ならではの幅広い番組をそろえたい」と同組合。馬主に対しては、出走機会を増やすことで理解を求める方針だ。
 しかし、馬主の協力が得られなければ、さらなる馬の減少も危惧される。さまざまな懸案を抱えながら、荒尾競馬は正念場の秋を迎える。(熊本日日新聞)
【写真】第7回レースが開催されている荒尾競馬のパドック。馬の減少は、競馬の現場にも影響を与える=荒尾市